子どもの遺伝とスポーツ能力
- 2025.12.03
- スポーツ環境
- 子供たちのスポーツ現場, 幼児期のスポーツ, 親子関係
保護者の方から、よくこんなご質問を受けます。
「親が運動できないと、子供も難しいですか?」
「才能がないなら、無理にやらせない方がいいですか?」
結論からお伝えします。
スポーツにおいて、
遺伝は限界ではありません。
伸び方の個性を決めるものです。
遺伝は「可能性の幅」を決めるだけで、実際に「できる・できない」を決めるのは環境と経験による物です。親の能力が遺伝するのではなく、親の生活習慣(家庭環境)・価値観・関わり方が遺伝以上に影響します。
子供は「向いていない」のではなく、「まだ経験できていない」だけのことが多いことも理解し、子供の苦手と不向きを判断するのが早すぎると、芽は出ないことを認識しましょう。
よくある誤解を整理する
まず、よく言われる3つの例を分解します。
✔ スポーツ
- 遺伝:筋繊維のタイプ、関節の柔らかさ、心肺能力の上限など
- 環境:幼少期の運動量、遊び、成功体験
👉 運動神経は「使った神経が育つ」ので幼少期から様々な全身運動をすることが大事です。
やらなければ、才能があっても表に出ません。
✔ 勉強
- 遺伝:記憶力、処理速度、集中のしやすさ
- 環境:言葉の量、読書、会話、成功体験
👉 地頭より「学び方に慣れているか」
勉強できる親ほど、無意識に学習環境を作っています。
✔ 身長
- 遺伝:最終的な身長の「上限と下限」
- 環境:睡眠、栄養(食事)、運動、思春期の生活
👉 運動・栄養(食事の質)・休息(睡眠の質)の内容で決定します。
遺伝が決めるのは才能ではなく幅
遺伝によって影響を受ける要素は確かにあります。
- 筋肉のつきやすさ
- 体の柔らかさ
- 心肺機能
- 身長や骨格
しかし、これは「どこまで伸びる可能性があるか」という“幅”を決めているだけです。その幅の中で、どこまで実際に伸びるかは、経験と環境で決まります。
指導現場でよく見る現実
私はスポーツの現場で、こんなケースを何度も見てきました。
- 親が元アスリート → 子どもが必ず伸びるわけではない
- 親は運動が苦手 → 子どもが大きく成長する
違いを生むのは、遺伝より「育ち方」です。
伸びる子に共通する環境
- 小さい頃から体を動かす機会がある
- 失敗しても否定されない
- 結果より「過程」を認めてもらえる
向いていないは、ほとんどの場合まだ判断が早い
スポーツの能力は、年齢によって現れ方が大きく違います。
- 低学年で目立つ子 → 神経系が早く発達しているだけ
- 高学年・中学生で伸びる子 → 体と心の成長が後から来る
指導者としては、「今できる・できない」で将来を判断しないことを最も大切にしています。
保護者の関わり方が、能力を大きく左右します
実は、遺伝以上に影響するのが保護者の声かけと関わり方です。
伸びやすくなる声かけ
- 「よくチャレンジしたね」
- 「前より良くなってるね」
- 「続けているのがすごい」
プレーや取組姿勢をみてポジティブな声掛けができると子供は喜びます。
伸びにくくなる声かけ
- 「なんでできないの?」
- 「〇〇君はできてるのに」
- 「向いてないんじゃない?」
子どもは、評価されるスポーツではなく安心して挑戦できるスポーツで成長します。ネガティブな言葉掛けによってやる気を失ったり、失敗を恐れたりするので大胆なチャレンジが出来なくなります。
指導者としてお願いしたいこと
私たち指導者は、「才能を見抜くために指導しているのではなく」才能が伸びるように環境を作るために指導しています。だからこそ、保護者の皆さまには「才能があるかどうか」ではなく、「今、何を経験しているか」「今成長過程の中でどこにいるのか」を一緒に見ていただきたいと思っています。
遺伝はスタート地点であり、努力によって才能や能力を開花することができますので、一人ひとりの成長のタイミングを見守っていきましょう。
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